【サイレントキラー】女の子の正義
"美少女戦士セーラームーン"
といえば、多くの女性に愛される漫画、アニメ作品ですね。近年はアニメがリバイバルされ、ファッション業界ではセーラームーンとコラボレーションした商品が数多く作られました。今や海外の女性にも大人気だそうです。
私も生粋のセーラームーン世代です。
私は、漫画家の前はセーラームーンになる事が夢でした。主人公のうさぎちゃんは、みんなに愛される女の子。泣き虫だけれど、一生懸命「悪」と戦います。好きな人もいて、ピンチの時は大好きな彼から守ってもらいます。
セーラームーンは女の子の夢や憧れの象徴でしょう。男の子のヒーローとは違う、「女の子の正義」を持っています。
男の子のヒーローも、セーラームーンも、
共通しているのは悪と戦うこと。なぜ戦うかというと…
「大切なものを守るため」
大切な人、大切な友達、大切な家族、大切な心…
それらを守るため、命をかけて戦います。
その姿は、正義感に溢れ、観る人を魅了します。
…ここからは、
…子供の夢を壊すお話をします。
家の中の「戦争」によって子供の私の心は、暗い戦場のようになりました。
戦争が始まる度に母と兄のことが心配になりました。兄は何度も、父から「唇を噛むな!」と怒鳴られます。
私は不思議でした。
兄は私の前では唇を噛む、…そんな姿見せませんでしたから。そしてある夜は、母がリビングに正座して居ました。母が寝る場所である寝室は、開かずの間のように閉められています。母が私に言ったのは
「大丈夫だよ」
…それだけでした。
その時私は何を感じたのか、よく思い出せません。しかし、心の中はざわざわとしていました。風のざわざわなのか、話し声のざわざわなのか分かりません。
そしてその後のある日
私はとても緊張していました。物音を立てないよう細心の注意を払って、階段を下りました。
向かったのは台所です。
そして、両親の寝室の前に立ちました。
手には「包丁」を持っていました。
どれくらいの時間だったのか、立ち尽くした後再び台所へ行き、持っていたモノを戻し、階段を上がり部屋に入りました。
その後泣いたのか、すぐ寝たのか、
…覚えていません。
おそらく
子供の私はセーラームーンになれなかったのでしょう。
悪と戦うことも、大切な人を守ることも出来なかった。
何が悪なのか、何が正義なのか
その答えは見つからず
大切な人の笑顔を取り戻すことも出来なかった。
大人の私の口から出た
「殺さないと殺される」
…あくまで推測ですが、
この切羽詰まったような言葉は、
"父を殺さないと母と兄が殺される"
母と兄の変化に気付き、二人が壊れてしまうと思ったのではないかと思います。
そして子供の私が戦わなければいけなかった「悪」は、優しい姿も知っている「父」でした。
世界で終わらない戦争によって、
子供達は親や兄弟を亡くします。見ず知らずの人によって見たこともない凶器によって殺されます。
その時子供の私は何を感じていたのか、
大人の私には想像出来ません。
しかし、
よく踏みとどまってくれたと思います。
一生懸命考えて出した
childの「正義」だったのでしょう。