子供の質問

アダルトチルドレンと教えてもらい、それからの日々の事など。

【ゴースト】幽霊になるという選択

ピエロは家に帰るとゴーストになります。

なぜゴースト=幽霊という名前を付けたのか…それには二つの理由があります。

一つは、家でピエロになることは出来なかったからです。「ピエロ(ゴースト)」は、家の外でも家の中でも"ありのまま" の自分を出せなかったインナーチャイルドです。それが他のインナーチャイルドと違う点でしょう。

ありのままの姿で生きられないというのは、大人でも大変なストレスであり、多くのアダルトチルドレンが抱えている大きな悩みです。

友達と二人きりの時は、ありのままの姿を見せていたかも知れません。しかし、それは見て欲しくない自分の弱い姿でもありました。

家の中でもピエロになりきる事は、精神的に無理だったのではないかと思います。

もう一つの理由は、
家の中の戦争から逃げたかったからです。
戦争から逃げる=存在を消す
それによって自分をなんとか保っていました。

戦争が始まるのは決まって夕食の食卓でした。
ついさっきまで楽しくご飯を食べていたのに…
目の前にはまだ食べかけの夕食があります。

終わらない戦争で中学生の私が始めたのは、
目の前の光景を "柔らかく" することでした。

私は目が悪く、しかし眼鏡をかけるのは嫌いでした。右目はこの頃はまだよく視えていました。視えないのは左目です。重度の乱視を持っています。

戦争が始まると、私は左目に意識を集中させます。
すると、焦点…ピントが合わなくなり、見える景色が柔らかくなるのです。輪郭がなだらかになり、ぼんやりとする。距離感も失われ、現実から切り離されたような気分になります。まるで、戦争がどこか自分とは遠い場所で行われているような、そんな気分になれました。
(ピエロの次のインナーチャイルドである「ペインター」は絵を描く時に、この乱視の機能を良く使いました。右目に意識を集中させて輪郭を、乱視の左目に意識を集中させると、大まかな明暗の差を見分けることが出来ましたから。色の感じ方も左右で異なるので、不思議ですね。)


前回の記事で書いた通り、ピエロ(ゴースト)は自尊心を失い、家で感じるのはいつも「無価値感」でした。「自傷行為」がひどかったのも、このピエロ(ゴースト)の期間です。

戦争から逃げるように自室に入り、手に持ったのはカッター。リストカットを始めました。

リストカットと検索すると、強烈な画像が出たりしますが、私がリストカットで作ったキズは、2センチ程の小さなものばかりです。カッターで切った傷よりももっとひどいのは、自分の手で掻きむしった痕でした。

アダルトチルドレンの健康」で、自傷行為について今後書こうとは思っていますが、
ゴーストの場合は "無意識" にやってしまう事が多かったように思います。ですからカッターよりも手軽な自分の手を使い、気がつくと血だらけで、いつも急いで止血をしていました。

小さな子供も、顔を引っ掻いたり爪を噛んだりしますね。
ゴーストの自傷行為は、高校生や大人のやるそれとは違い、幼い子供のような、本能的に体が先に動いてしまっている状態だったのではないかと私は考えています。

「枕元の銃声」からは、ゴーストになっても逃れることが出来ませんでした。なかなか眠れませんし、日に日に「耳」が大きくなっているように感じました。ようやく眠りについたとしても、怖い思いをします。

夢によく出てきたのは父でした。そして、「サイレントキラー」の名残りなのか、包丁を持った父に追いかけられる夢を見ます。その次は自分が父を殺す夢。…その二つを交互によく見ていました。
精神的に、この頃はひどく弱っていました。
なぜ助けを求めなかったのか、大人の私からすると、不思議な程の我慢強さです。

兄の高校受験の前夜、
戦争が始まり、戦場はリビングから、
自分の部屋の扉のすぐ向こう側…階段まで迫ってきたことがありました。
怒鳴る父と、兄と、悲鳴にも似た母の声がします。
兄はこの時拳を握り震えていたそうです。

幽霊のようにひっそりと息をひそめる私は、

"ここから居なくなりたい…"

しかし「どこでもドア」はありません。
大きくなるドアの向こう側の音に反応し、ビクビクします。


"みんな階段から落ちて死ねばいいのに"


ゴーストの居場所はどこにもありませんでした。
自分の世界がどんどん壊されていくような、家ではそんな日常でした。