5人の出現
インナーチャイルド達と向き合うと、色んな出来事を思い出しました。思い出したくないことも、すっかり忘れてしまっていた、楽しい日々も。
先日私は思い出したくない出来事を鮮明に思い出して、朝まで眠れず仕事に行きました。寝不足は…いけませんね。力が出ません。
思い出したのはある日の夜の出来事。
まだアダルトチルドレンという言葉を知らず、視えたり聴こえたりといった症状に悩まされていた時でした。
その日の夕食の食卓、
私は苛々していたのかも知れません。
父から発せられる言葉にひどく敏感に反応し、露骨に父に向かって文句を言っていました。そして、私から喧嘩を吹っ掛けてしまいました。
私は目の前の食器を父に向けて放りやり、それを受けて父は怒りを露わにします。
食器を拾わない私を、父は大きな声で怒鳴りました。
突然、父の背後に動く巨大な蜘蛛が視えました。
私はその視えないはずの蜘蛛に、釘づけになりました。
そして父がこちらへ向かって来ようとしたその時
私は自分でも聞いた事のない叫び声をあげます。
母は悲痛な表情で立っていた私に腕を回し、支えました。
母は
「やめて!今この子は不安定なんです!病院に行ってるの!」
おそらく症状が出たのだと、思ったのでしょう。
母の声を受け、私は自分を取り戻したように冷静になります。
「触らないで」
母の腕を振り払い、階段を上がり自分の部屋に入りました。
一階からは父の言葉のナイフが飛びます。
静かにドアを開け、私は二階の廊下に立ちました。
"どうするんだ"
"アレをどうするんだ"
"誰のせいか?"
"誰のせいだ?!"
激しく母を責め立てていました。
その瞬間私は自分も聞いた事のない音量の声で
「あんたのせいだよ!!」
…あまりの声量に自分でも驚きました。
その後私は部屋へ戻り、泣きました。
泣きながら壁を叩きました。
一階からは
"ほうら、またはじまった"
"どうするんだ"
父のナイフは離れているはずの二階の私の胸に刺さります。
私は知らず知らずの内に手首を掻きむしっていました。血が出ています。慌てて止血しました。
東京タワーで買った、オブジェが目に入りました。
私の口から出たのは、
「戻ってくるんじゃなかった…」
この夜は、大変疲れました。
自分で自分が手に負えない…とは、おそらくこんな状況なのでしょう。
食器を放りやったのは、【ペインター】
(…大人の私には、こんな大胆なこと出来ません。)
父の背後に巨大な蜘蛛を視たのは、私。
父に怯え泣き叫んだのは【child】
冷静さを取り戻したのは、私。
二階の廊下から大声を出したのは【ペインター】
涙を流したのは【フラワー】
(フラワーについてまだ話していませんが、彼女は他のインナーチャイルド達と違い、家庭への憧れを持っていました。)
壁を叩いたのは【ペインター】
(私は卒展の大作で、絵の具をキャンバスに叩きつけていました。)
言葉のナイフに刺されたのは【child】
手首を傷付けたのは【ゴースト(ピエロ)】
母が東京に来た時に一緒に上った東京タワー…そのオブジェを見て呟いたのは【ドリーマー(ロスト)】
あれは完全に、5人全員が出てきてしまった…そう思っています。5人を引き離すこと、そしてそれぞれの意見を聞くことは、その時の私…「視えないもの」を見つけてしまった私には不可能でした。
改めて精神科に駆け込んだあの日、
「殺意」を感じたあの日を思い出すと、
"殺したい"
その私の口から出た言葉は、紛れもない大人の私自身の殺意だったのだと思います。
5人が出現した日を境に、精神科に駆け込んだあの日まで私は、
何も出来ませんでした。
大人の対応というものが出来ていなかったように思います。
インナーチャイルド達が出現する度に、彼らと向き合うことから逃げていました。
身体を傷付ける日もあれば、
東京への未練を感じる日もある。
父の怒鳴り声に怯える日もあれば、
会社の人と喧嘩をし仕事を放ったらかして帰る日もありました。
調子がよかった、楽しかった日々を振り返り現実から逃げていました。
その時の大人の私には、
5人と向き合う勇気も力もありませんでした。
"もうダメかも知れない"
もう自分が手に負えない。次に感情が爆発した時に、冷静でいれる自信がない。もう死ぬしかないのかな…
"なんでだろう?"
"どうしてだろう?"
なんで私が死ななきゃいけないの。どうして…私が死ぬ必要なんてある?何か間違ったことした?
"あいつさえ居なければ"
あいつが悪い。あいつが私の世界をめちゃくちゃにした。大切な人を傷付けた。いつだってそう。自己中心的で利己的で嘘つきで乱暴で自己愛が強過ぎる。
"殺したい"
紛れもない、大人の私の「殺意」でしょう。
5人の誰かではなかった、
少しホッとした気持ちは、
私が大人だからかも知れません。
「子供」じゃなかった…
この安堵感に、私は今救われています。