脱力できるということ。
私にはすぐに力を「抜いてしまう」癖があります。
簡単にいうと脱力癖です。
その根底にあるのは、"諦め" でしょうか。
もうダメだと感じればすぐに身体の力を抜いてしまう癖があり、これは身体を使う今の仕事では、少々悩まされる癖でもあります。ミシンで綺麗に縫い合わせるためには、一定のスピードと力加減が、仕上がりに大きく影響してくるからです。
しかし私が子供の頃から通うお習字教室では、先生に褒めてもらえます。
「飛鳥ちゃんはふと、力を抜ける。力を抜いた線が書ける。芸術家向きの線。」
というもの。
筆で字を書くには、ガチガチに緊張していては書けません。なだらかな、つなげ字…行書や草書であれば尚の事、肩の力を抜き、腕に身を任せて書くことが必要になってきます。
確かに私は、行書や草書が好きです。
カチっとした楷書よりも、伸び伸びと書ける気がします。私が普段厄介に感じる脱力癖は、書道の世界では武器になるというので驚きです。
再びお習字教室に通い出して、色んな書体を練習するようになりました。
「隷書」と呼ばれるものがあります。
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E9%9A%B7%E6%9B%B8%E4%BD%93
通常であれば右上りが美しいとされる字ですが、隷書の場合は平行に、太さも変えずに線の終わりだけアクセントを入れたりします。字というのは縦長に書いた方が格好よく見えるのですが、隷書の場合はこれも異なります。多くは横長の字になるのです。
この隷書が、私には非常に難しい…
一本の線の中でつい、力を抜く癖がある私は、太さを変えずに書くことが難しいです。
平行に…といのもまた、難しい。
線に強弱をつける癖も、あるようです。いえ、基本的に強弱をつけた方が、味わいがあったり重々しい雰囲気を出せたりするのですが、隷書の場合はそれは良しとされないのです。
隷書という書体は、格式高いイメージを与えます。
高級な中華料理店や、お寺などで目にすることが多いでしょう。
横長の隷書には、どっしりと構えた力強さを感じます。線自体は逆筆(筆先が見えない、筆先を隠すような柔らかい始筆。行って、戻るような動きです。)、その効果で柔らかい線なのですが、その線に極端な太さの変化はなく、安定感があります。
力を抜いてしまうことは、困った面もありますが、"力を抜くことが出来る" という強みでもあります。
力を抜いては困る場面では、隷書体のようなどっしりとした心持ちで居たいものです。